釜ヶ崎
”日本唯一のスラム街”といわれる、大阪の釜ヶ崎を訪れた。
あいりん地区ともいわれるこの地域は、日雇い労働者やホームレスが溢れ、軽い気持ちで訪れるような場所ではない。
仲間内からはカメラをぶら下げて歩いていたら、絡まれたとか追いかけられたとかそんな話も耳にする。
スナップを撮るには、目立たないのがポイントだ。
街に少しでも溶け込むため、色あせてヨレたTシャツにサンダルを履き、そして髪は搔きむしってくしゃくしゃにして、指輪や時計も外した。
あとはリュックを背負い普通にしていればおかしくはないはずだが、カメラをぶら下げているためか、四方からは度々視線が突き刺さる。
その視線の痛みといえば、時折出会う野良猫からも感じるものだった。
”ヤバくなったら走って逃げる・・”
周囲へ感性を向けながらも、その言葉が頭の中に常にまとわりついた。
とても神経の尖る中でのスナップは想像よりも精神を削られる。
息が詰まってきたら、人の姿のない路地へ入ってはホッとして息を抜いた。
ところどころの路地裏からは、あべのハルカスの姿が見えた。
そう遠く離れた場所ではないのに、あの場所とここでは人も環境もまるで違う。